器楽幻想





 木製の調度品の、温かさを持つ部屋だった。そこに広がるのは、およそ似つかわしくない卑猥な光景。筋骨たくましい赤い髪の男を、背後から、長い水色の髪の長い男が犯している。
「うぁっ……あ……あ……っ!」
 ひと突きごとにオスカーが呻く。苦しげに聞こえるそれは、しかし確かな快楽を含んでいる。
「いっそのこと、俺と身体を重ねてみないか」
 オスカーが、わざわざ自邸を訪ねてそう言ったとき、リュミエールは心底彼を軽蔑した。彼が、中性的な容姿の自分を、女のように扱おうとしていると思ったのである。
 出会ったときから良くはなかった二人の相性は、以後、悪化の一途をたどった。さすがにまずいと思ったらしいオスカーの提案が、「身体を重ねてみないか」である。
「あいにくと、私はあなたの大好きな女性ではありません。あなたに身体を差し出す気もなければ、それで心がつながるとも思いません」
「勘違いをするな。俺は、お前を抱きに来たんじゃあない。お前に抱かれに、いや、犯されに来た」
 リュミエールが息をのむ。
「辛いんだ、今の、ままでは。俺たちは何ひとつ理解し合えない運命なのだとしても、出来ることは、すべて試したいんだ。お前を知りたいんだ。だから頼む。俺に挿れてくれ」
 水の守護聖の端正な顔が、石膏のつくりもののように色を失った。彼は激しく動揺していた。オスカーの苦しみも、自分への気持ちも、まるで知らなかった。今まで、とんだ誤解をしていたのではないだろうか? 自信過剰な態度も、居丈高な言葉も、他人を見下す視線も、自分の彼への偏見がそう見せたのであって、実は切実な、心の底からの祈りのような何かが隠れていたのではなかろうか。現に今オスカーが、自分たちのすれ違いを解消するために、何もかも投げ出そうとしているように……。
「わかりました」
 リュミエールは応えた。半ば夢の中で、抗うことが不可能であるかのように応えていた。
 オスカーの後ろでつながると、男の本能でリュミエールは腰を動かした。徐々に乱れていくオスカーの吐息はリュミエールの心をも乱し、抑えきれずに漏れる声が、理性を奪う。
「ここが、いいのですね。ここを擦るときの、あなたの声が、一番、好きです。振動が体中を伝わって、楽器を奏でるように、心地がいい……」
 見出した弱点を、リュミエールが責める。オスカーは切なく鳴いて、眉をしかめた。はた、とリュミエールは動きを止めた。
「申し訳ありません、楽器だなどと。私は、なんということを……!」
「いや、本望だ」
 オスカーは、上気しきった頬に男くさい微笑を浮かべて見せた。
「お前がどれだけ、楽器に愛情を注いでいるかは知っているからな」
「オスカー……」
 リュミエールは、オスカーのなかの自身に血液が集まるのを感じた。気持ちの昂ぶりをぶつければ、オスカーがまた、官能的な音色をつむぐ。
 リュミエールは手に入れた。新たな音楽を。燃えるような恋情を。子守唄だけは奏でられない、魅惑の器楽を……。










オスカー様お誕生日おめでとうございます!
リュミエール様との親密度がちょっとでも上がるよう願いながら投稿します。

月山